※グロテスクな描写があります。


Brutal full moon  


「……あ………!」
 すっかり日は落ち、辺りは闇に塗り潰された頃、ジズは自室のベッドの下に何か光る物を見つけた。
 拾い上げてみると、それは稲妻形で金色に光るペンダント――アッシュの、トレードマークになっている物だった。一昨日この家に来た時に、落としていったのだろう。
 ……仕方のない人ですね。
 少し笑いの混じったような溜め息を漏らし、ジズはそれを丁寧にハンカチに包むと、そっとポケットに仕舞う。もう夜の十時を回っているが、確か明日は撮影が入っていた筈だ。これが無いと、きっと困るだろう。
「届けて差し上げますか」
 呟いて、ジズは玄関へと足を運んだ。

                     


 闇に聳える城を前にして、彼は一人、首を傾げた。
 灯りが、一つも点いていない。
 この時間だ。誰も帰っていないのは妙だし、誰もいないのなら、自分が来た意味もない。
 明日に備えてもう眠ってしまったのだろうか。起こすのは申し訳ないが、明日の朝押しかけるのも悪い気がする。
 ジズは重い息を吐いて、呼び鈴を鳴らした。
 やはり、応答は無い。次いで扉をノックしてみるが結果は同じで、無駄だと思いつつも、ドアノブに手を掛けてみた。
「おや?」
 ひどくあっさりと、扉が開かれた。
 重苦しい闇を湛えた城が口を開ける。
 鍵を掛け忘れたのなら無用心な事だ。しかし自分が内側から鍵を閉めて、幽体化して出て行けば問題ない。次会う時に鍵がかかっていなかったと伝えれば済む話だ。
「こんばんはー。どなたかいらっしゃいますかー?」
 暗い城の中に、ジズの呼び声が虚しく響く。返事はない。
「お邪魔しますよー!」
 仕方ないので玄関に足を踏み出し、城の中に入っていった。
 よく見慣れた城内なのに、何故だかとても寒々しい。ジズは何か胸に引っかかる物を感じつつ、アッシュの部屋に向かった。途中スマイルやユーリの部屋の前を通ったが、中に人がいる気配はしなかった。スマイルの部屋に至ってはノックし、次いで細く扉を開けてみたが誰もいなかった。
 皆出かけているのだろうか。疑問を抱えたまま、アッシュの部屋を目指す。
 そして彼の部屋の前に立った途端、ざわり、と胸騒ぎがした。
 思わず怪訝な表情をその顔に浮かべる。
 何か、とても嫌な予感がしたのだ。
 その予感の正体が何かは解らなかったが、確かに胸に蟠っている不安を感じながら、ドアをノックする。
 応答は無い。灯りの消えた城内で、アッシュが居るとすればこの中の筈だ。やはり眠っているか、出かけているかだ。しかしこの部屋だけは、中に人がいる気配がする。
 眠っていらっしゃるのですね……
 まだ真夜中という時間ではない。このままリビングにでもペンダントを置いていってもいいが、少しくらいなら起こしても構わないだろう。
 何より、今のこの胸騒ぎを、彼と話して振り切りたかった。スマイルや、恐らくユーリも不在な理由も気になる。
 ドアノブに手を掛けて、回す。鍵は掛かっていなかったようで、ドアはあっさりと開いた。
「……ジ……ズ………?」
 部屋の正面、カーテンを閉めた大窓を背にした所に、アッシュが立っていた。その様子にジズは安堵する。何かとても嫌な予感がしたが、どうやらそれはアッシュに対してではなかったらしい。
 しかし、彼は何故、こんなにも怯えた顔で自分を見ているのだろうか――?
 そんな事を思いながら部屋に入ると、いつもの微笑を浮かべた。
「何だ。起きていたのですか。何度呼んでも応えてくれなかったから眠ってらっしゃるのかと――」
「ここに居ちゃ駄目だ!!」
 アッシュは突然そう叫ぶと、ジズの肩を掴んで部屋の外に押し出そうと力を込めた。アッシュが瞬発的に動いた事によって生じた風が、閉まっていたカーテンを少し、開かせた。ジズは訳が解らず、とにかくその場に踏み止まる。
「ちょ……! どういう事です? 何が有ったのですか?」
 普段と明らかに様子が違うアッシュに動揺し、必死で彼の力に抵抗する。
「説明してる暇は無いんスよ! とにかく今日はもう帰って!!!」
「アッシュ!?」
 明らかに様子が可笑しい。一体何が有ったのか聞き届けるまで、自分がこの部屋から出ていく事は出来なかった。
「落ち着いて下さい! ユーリさんとスマイルはどうしたんです!?」
「二人共今日は出させた! だからジズも早く出て!!!」
 出させた?
 ジズは眉を顰める。何か、今日はアッシュがこの城に一人で居なければならない理由が有るというのだろうか? そしてそれをユーリとスマイルも了承している?
「アッシュ! 私は貴方に届け物をしに来ただけなんですよ?」
「今日はいい! 明日こっちから必ずジズの家に行く! だから今日は頼むから帰――」
 そこまで言った時、ふいに室内が明るく照らされた。
 今まで雲に隠れていた月が露出し、開いたカーテンから月光が部屋に降り注いだのだ。そしてその正円を描いた月の光が、アッシュを照らした、瞬間――――
「!」
 突然アッシュはジズの首を掴んで強く引き、部屋の中へ投げ入れるとドアを閉めて鍵を掛けた。背中から床に叩きつけられ、その衝撃で一瞬息ができなくなる。
 何が何だか解らず、上体を起こして床に座ったまま咳き込むジズに、アッシュはゆっくりと歩み寄り、しゃがんで視線を合わせる。
「アッ……シュ…………?」
 苦し紛れに彼の目を見て、凍りついた。
 いつもの優しい瞳は何処にもなく、長い前髪の奥に見えるのは何の情も持たないような冷たい瞳。そうまるで――獣のような――
「――――よこせよ……」
 ぼそりと、呟くようにそう言ったかと思うと、アッシュはジズの服を引き裂いた。
「――っ!!」
 ジズの薄い裏葉色の肌が露わになり、その胸に咲く黒い薔薇の紋章が月光に照らされて、やけにハッキリとその輪郭を強調する。
 ここまできて、ジズはようやく思い出した。
 今日が、満月の夜である事を。
 そして彼は、いくら普段優しくても、れっきとした人狼である事を。
 恐怖が一気に駆け上がってくる。ジズは瞳を見開いて硬直し、獣と化した彼を見つめた。
「!」
 アッシュは乱暴にジズの肩を掴むと、躊躇う事なく首に牙を立て、何の遠慮も無しに噛みついた。
「ぅ……あああああああああ――!!!!」
 首の奥深くまで牙が食い込む激痛に叫ぶジズを気にする事なく、アッシュは溢れ出る鮮血に喉を何度も嚥下させ、乾きを潤すように飲み続けた。
 やっと首から牙が抜かれると、ジズはそのまま床に倒れ込み、未だに続く激痛に顔を歪める。口の端から、細く赤い血が筋を引いた。
「か……は……っ……あ……」
 細い息を吐き、虚ろな瞳でアッシュを見上げるが、彼はそんなジズを何の感情も無い目で見下し、口に付いた血を手の甲で拭った。
 だんだんと、ジズの傷口は治癒していく。幽霊の身である為、傷や病気の類はすぐに治る。どんな重症を負っても、最長一日経てば必ず治ってしまう。
 だがたった今失った大量の血はそうはいかない。少なくとも、あと数十分は血の再生はされないだろう。それ程までに大量の血液を、アッシュは飲み干してしまった。
 ぐったりと横たわるジズに覆いかぶさるようにして、アッシュはジズの顔を覗き込む。怖気の立つ狂った嗤いを浮かべた彼は、まるで捕獲した獲物を品定めする猛獣のようだと感じた。
 月に一度のこの夜を、全く覚えていなかった訳ではない。しかし今日は忘れてしまっていた。アッシュは普段、もう一人の赤い人狼――赫とは違って、人狼故の狂暴さや非道さを全くと言っていい程出さない。彼が月に一度の満月の夜は、誰にも合わないように閉じこもり、そして絶対に月を見ないように、己の中にある獣が殻を破って出てこないように闘っている事は知っていた。
 知っていたのに――
「………アッシュ……」
 認識が甘かった。今この状態になったのは自分のせいだ。今後の互いの為に、割り切らなくてはならない。“これはアッシュじゃない”と。その上で攻撃し、沈黙させなくてはならない。
 貧血で体に上手く力が入らない。しかし何かしなければならないのだ。朝日が昇り、正気に戻ったアッシュが血の海に沈んだ自分を見て、どれ程苦しむか想像を絶する。ここで大人しく喰われる訳にはいかない。自分の為ではない、アッシュの為にだ。
 月の呪いで覚醒した人狼は、肉体的、性的に狂暴化する。何とかして脱出しなければ何をされるか解らない。
 霞む視界に重い体。この状態でどんな反撃が出来るのだろう。幽体化しようにも、貧血で朦朧とする意識は実体化を解くのに集中できない。
 どうする。
「……っ……」
 全く霊力が使えないという訳ではない。一分でもいい。気絶させられれば逃げられる。
「――寝なさいアッシュ!」
 全神経を集中させて、指先から人形を操る時に使う鋼線を放つ。斬鋼線なら触れるだけで肉を裂くが、それだと殺してしまいかねない。
 鋼線は細く空気を切る音を鳴らしてアッシュの首に絡みつく。そのまま振り上げれば、彼の体は宙に踊り、床に叩きつけられる筈だった。
「――ってぇな」
 しかしアッシュは、成人男性を数人吊るせる強度を持つ鋼線を、まるで絹糸を千切るような動作で、容易く切断した。
「!!」
 瞳を見開いて驚愕する。まずい。理性が警報を鳴らす。やはり、甘すぎた。
「抵抗する悪い子にはお仕置きが必要だな」
 笑いを含んだ声で囁かれて、どこまでも冷たい瞳に背筋が凍る。
 覚醒した人狼の力を侮っていた。
「ひぐっ!!」
 ドスッという重い音と体を貫く衝撃が全身に響き、瞳を見開いて喉を仰け反らせる。一瞬遅れて激痛が神経を襲った。
「がっ――うあああああああああああああああ!!!!!!」
 腹部に手首まで深く突き刺されたアッシュの手が溢れる鮮血に染まる。
 意識が、真っ赤になった。
 口腔から迸る絶叫が、アッシュはまるで優雅な音楽であるかのように目を細め、ぺろり、と舌舐めずりすると、ジズの腹の中に突き刺した手の五指を思い切り広げ、中に詰まった内臓を鷲掴みにした。
 耳を覆いたくなるような絶叫が、部屋中に響き渡る。ごぼっ、と濁った音がして、直後ジズの口からも真っ赤な吐血が溢れる。
 濃密な血気が部屋を満たす。
 ジズは既に、何の思考も出来なかった。ただ気が狂うような激痛に絶叫するだけの人形と化している。
 ずるりと引き抜かれたアッシュの拳から、何か長い物が自分の腹部と繋がって揺れているのが見えた。もう、絶叫すら声にならない。傷口から温かい血が溢れ出し、絨毯に染み込んでいく。月光が、赤黒く汚れていく絨毯を照らし出す。意識は闇の底に沈んでいく。じわじわと、しかし着実に迫ってくる冷たい感覚。七百年前は一瞬で終わったが、これがゆっくり近づいてくる“死”の感覚である事をジズは悟った。自分は、例え今心臓を引き摺り出されようが死ぬ事はない。けれど“痛み”は生きた人間と同じように感じる。今激痛に意識を失っても、暫く経てば傷は再生して目を覚まし、また激痛を味わうのだろう。
 アッシュは一気に腸を腕一杯まで引き摺り出し、その柔らかく温かい物に食らいついた。甘い味を楽しむように食い千切り、租借し、旨そうに喉を嚥下させる。そうされた時には、既にジズの意識は闇の底に沈んでいた。ぐったりと陰った頬に、胸に、薔薇の刻印に、鮮血が飛び散る。アッシュは――人狼は傷口に両手を差し込むと引き裂くようにソレを広げ、中に詰まった臓腑を食らった。白い壁に、月光によって二人のシルエットが映し出される。傷口から中身を抉りだし、貪るおぞましい光景が映る。そのシルエットにも鮮血が飛び散り、部屋を赤黒く汚していく。ぐちゃぐちゃと怖気の立つ濡れた音と獣の息遣いだけが部屋に響いていた。
 肉を切り裂き、臓腑を引き摺り出し、溢れる血を啜って餓えは満たされたのか、彼は汚れた口元を手の甲で拭い、気絶したまま血の海に沈むジズを見下ろした。細く艶やかな黒髪も、透き通るような裏葉色の肌も血糊で汚れ、右顔の半仮面は白い色を殆ど見せていなかった。彼自身が着ている白いシャツも、返り血で真っ赤に濡れていた。周囲に散乱した肉片と臓腑の断片が、むせ返るような臭いを放っている。徐々に、ジズの傷口は治癒していく。失われた血、食い荒らされた内臓まで再生するには一晩かかるが、肉を切り開いてもだんだんと傷が塞がっていく様を、彼は面白く感じた。食べても食べてもなくならない御馳走のようだ。最初に腸を引き出した時からどのくらいの時間が経ったか解らないが、もう充分食べた。甘く瑞々しい血肉によって空腹感は満たされた。 
 味が良い。シャバの肉は随分久しぶりだ。
「……起きろよ。まだ夜は長いぜぇ」
 そう囁くと同時に、ジズの頬を殴りつける。衝撃で仮面が飛んで絨毯の上を跳ね転がった。露わになった右頬に走った三本の爪痕から、赤い鮮血が筋を引く。
 霞の中から引き戻された意識に、瞼を開けるジズ。
「――うっ……ぐあっ!」
 意識が繋がると同時に、神経が激痛に火を噴く。電流のような激痛が体を突き抜け、一瞬激しく痙攣する。痛みと貧血とで全身に力が入らない。意識を失ってからどのくらいの時間が経過したのだろう。痛みの中で自分の顔も髪も血で汚れ、周囲に肉が散らばっている事を知る。口内が血の味で満ちて吐き気がする。意識を失っている間に、彼が自分に何をしたのか、漠然と理解した。
 それでもまだ、彼の餓えは収まらないのだろうか。
「……アッ……シュ………!」
 痛みに顔を歪めながら、今尚獣の目をした彼を見上げる。駄目だ。これ以上堕ちてはいけない。聖物を体内に入れられない限り、何をしても死なない体だ。自分が犠牲になれば彼が満足するというだけなら、我が身を捧げよう。しかし正気に戻った彼はどうなる。どんなに己を責めるか解らない。頭を覆い、限りのない後悔の念に押しつぶされるアッシュの姿が浮かび、ジズは色違いの両目から、涙を零した。
「………駄目……です……もう」
「うるせぇな」
 訴えるジズの言葉を遮り、赤く汚れた右手で彼の首を掴み上げた。
「!?」
 思わず瞳を見開く。頸動脈を締め上げられて息が詰まる。そして直後自分の顔に向かって真っすぐ飛んでくる左手に、魂が悲鳴を上げた。
 まさか――
 アッシュが、そんな行為を自分にするという考えは、これまで全く無かった。

 しかし彼は愉しそうな嗤みを浮かべたまま、右の眼窩に鋭い爪を突き立てた。

「ぎっ……あああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
 ぐしゅっと湿った音がして、直後真っ赤な鮮血が吹き出し、首を掴む彼の顔に飛び散る。彼は口元に掛かった血を舌で舐めとりながら白く艶やかな眼球を掴み、力を込めて引き抜いた。
 ブツンと視神経の切れる音がした。
 酷く愉しそうに、彼は声を上げて嗤う。
 抉り取られた瞳と同じ色の温かな血が、ジズの右顔を遠慮なく汚した。
「クククッ」
 喉の奥で嗤いながら、彼はジズの眼球を口へ運び、音を立てて嚥下した。
「――――……アッシュ……!」
 彼は激痛に顔を歪めて自分の名を呼ぶジズを見下し、にたり、と不気味に狂った笑みを浮かべた。
 新しい遊びを思いついた、そんな笑み。
「ジズ、今度はお前も楽しませてやるよ」
 首筋に顔を埋めてそう囁くと、彼はジズのズボンを乱暴に引き裂き、その布で両手を縛り上げた。
「っ!!」
 緊張が背筋を駆け上がる。頭上で両手を拘束し、余った布はベッドの足に繋がれる。
 本当に、逃げられない。
「い……いや………アッシュ!」
 右の眼窩から血を、左眼から涙を零しながら訴えるジズを面白そうに眺めながら、彼は熱り立った自身を彼の秘部に押しつけた。
 慣らす事も、入口を解しもせず、彼はジズの中に抉りこむ。
「いっ! 痛い!! やだっ……アッシュやめてぇ!!」
 悲鳴のような叫びが上がった。皮膚を引っ張られ、肉を押し分けてくる圧迫感に、これまで感じた事のない苦痛を感じた。ジズの叫びを楽しむように、彼は笑みを浮かべたまま根元まで押しこむと、直後乱暴に動き出した。
「痛っ! いやぁ!! やめて!! やめてぇ!!」
「もっと啼けよ」
 深く押し込まれる度に激痛が電流のように貫き、体が跳ねる。それは愛情など全くない、ただの強姦だった。アッシュには、これまで何度も抱かれている。しかし彼を相手にこんなにも苦痛を感じた事は、今まで一度もなかった。
 強引な摩擦に耐えきれず、ジズの入り口は切れて血を流す。幸か不幸か、その血が自分と彼との摩擦を緩和し、痛みを和らげる。しかし傷口に感じる引き裂かれるような痛みは一層酷くなるばかりだった。
「ははっ……気持ちいいぜジズ……お前も楽になっちまえよ」
 獣の目で嗤う彼。何度も何度も繰り返される激しい律動に、だんだんと痛みは麻痺してくる。
 ほんの僅かなゆとりが生まれた。
「うっ……ひぐっ!……んっ……あ……」
「――へぇ。ヨくなってきたんだ?」
 口から零れた小さな嬌声に、彼は愉しそうに口の端を攣り上げる。
「やっ……違っ……あぁ!」
 抗議するが、一層深くまで打ちつけられ、意識を無視して甘い声が口から上がる。
 今の、獣と化した彼に対して、快楽を感じている自分が堪らなく恥ずかしく、許せなかった。
 これはアッシュじゃない。アッシュじゃないのに――
「あっ! やあああああああ!!」
 左足を肩に担がれ、更に深く抉りこんでくる彼の感覚に理性が焼ける。
「気持ちいいだろ」
 彼の顔から嗤みは絶えない。
 仰け反る喉を舐め上げられ――否、喉に付着したままの血を舐め上げられ、また激しく突き上げられて痛みと快楽が同時に襲ってくる。
 肉の擦れる音と、ジズの喘ぎが部屋に響く。
「――ほら、かけてやるよ」
 やがて、荒くなった吐息と共にそう言うと、彼は一旦自身を引き抜き、ジズの胸に、顔に、精液をぶちまけた。
「っ……う……」
 生臭い臭いが鼻をつく。
 少し乾いた赤黒い血と、白濁の液体が皮膚の上で混じり合うのをおぞましく感じたが、ジズには僅かな安堵があった。
 これで終わった。
 もう、彼の気は済んだだろうか……
 しかしそんな期待を裏切るように、彼はまたジズの中に自らを押し込んだ。
「あがっ……!!」
 乱暴な摩擦に耐えきれず弱くなった皮膚に、また激痛が走る。
「何驚いた顔してんだよ。まだまだ夜は長いぜ?」
 涙で霞んだ視界の向こうで見えた彼の笑みは、狂っていて――――

                     


 眩しいまでの朝焼けに照らされた自分の部屋でアッシュが見た物は、赤黒く汚れた自分の両手と、不気味な染みを大きく広げた絨毯の上に散乱する幾つもの肉と内臓の欠片。壁やカーテンにできた赤黒い飛沫の跡。

 そして衣服を無残に引き裂かれ、両手を頭上で拘束され、殆どの傷口は治癒しているものの生々しい赤黒い血と真っ赤な鮮血と、白濁の液体で顔も体も汚してぐったりと意識を失って目の前で倒れている、愛しい恋人の姿だった。


END


 自分でも驚く程の勢いで書き上げました。しかし、これエログロか? ちゃんとグロいか?; という疑問が頭から離れません。描写が甘いですな;最近こういう話全く書いていなかったので書き方忘れてるみたいです;もっと過激なの期待された方、本当にすみません。
 それにしても、ポプのエロあり小説の1番目がこれになってしまうとは……色々と……アレですね(どれ) いえ、普通の裏あり、アシュジズとか赤ラズとかでしょっちゅう妄想はしてるんですが、文章にしなかった為にこの話がトップバッターになってしまった;さらりと書いてありますが、これが二人の初Hではありません;それだとマジで洒落にならん;
 この話、もっとエロくする方法もあったんですけどね。玩具とかね。
 でも、赫なら有りだけどアッシュは流石に持ってないよね;って事で却下したら、いまいちエロも甘い作品となってしまった。満月なんだから、もっと凄いの書きたかったんだけどな;これでも頑張ったグロ描写に疲れて、後半ダラダラ終わってしまいました。力不足です;
 ぐあ〜っと書き上げましたが、本当に、高校のピーク時に比べて、日が経つ毎に自分から文章力という物が抜け出ていくのを感じます。
 どうしたらいいのだろう。
 無駄に長かったですが、ここまで読んで下さって有難うございました(T_T)/~~~